総評
更地から建てる開発型ファンド、利回り4.5%の裏側は完成リスクと売却依存。劣後比率20.4%は標準的だが、建築費10%上振れで利益は消し飛ぶ。鑑定なし・NOI非開示の霧の中、頼れるのは上場事業者の償還20件・元本割れゼロという実績のみ。
ポイント
更地から建てる開発型——完成しなければ話が始まらない
本ファンドは「KORYO Funding-MC #18」、茨城県水戸市に新築共同住宅を建築し、賃貸運用後に売却してキャピタルゲインを狙う開発型ファンドである。運用期間は2025年1月〜2026年6月の18ヶ月。既存物件の賃料を淡々と分配する賃貸型とは根本的に異なり、建物が完成しなければ賃料収入はゼロ、売却もできない。書面にも「運用開始から数か月間は建物が未完成のため賃貸収入が無く、初回分配時は想定利回りを下回ることがあります」と明記されている。建築コストの上振れ、工期遅延、資材高騰——これらすべてが投資家のリターンを直撃する構造だ。
鑑定評価なし・NOI非開示で利回り4.5%の根拠は霧の中
物件価格6,910万円の算定方法は「土地は取引事例比較法、建物は建築価格の合計」とされるが、不動産鑑定士による鑑定評価は「無」。満室想定賃料570万円/年という数字は記載されているものの、管理費・保険料・固都税などの費用項目は一切開示されておらず、NOIを独自に算出することは不可能。利回り4.5%が賃貸収益から出るのか、売却益から出るのか、あるいはその合算なのか——配当原資の内訳が不透明なまま「年利4.5%」と掲げられている。投資家は事業者の計算を丸呑みするしかない。
香陵住販の実績は堅実——だが自作自演構造に注意
香陵住販は東証スタンダード上場、資本金約3.9億円、直近期(2023年9月期)の売上高91.5億円・経常利益約8.0億円・純資産約44.3億円と、地方不動産会社としては堅実な財務基盤を持つ。KORYO Fundingの累計調達額は約13.3億円、償還済み20件で元本割れゼロ。ただし本ファンドは、事業者自身の固有財産(土地)を対象不動産とし、賃貸仲介・建物管理も自社で行う「自作自演」構造。物件の取得価格が適正かどうかを第三者が検証する仕組みがない点は、投資家として認識しておくべきリスクだ。
劣後比率20.4%は開発型としては標準的だが盤石ではない
出資総額6,910万円のうち劣後出資は1,410万円、劣後比率は20.4%。物件価格が約20%下落するまでは優先出資者の元本は毀損しない計算になる。ただし開発型ファンドの場合、建築コストの上振れは物件価格の上昇ではなく利益の圧縮として現れる。仮に建築費が10%上振れすれば、売却益が大幅に削られ、劣後バッファの実質的な厚みは見かけほどではなくなる。借入なし(LTV 0%)という点はポジティブだが、それは裏を返せば「レバレッジで利回りを底上げしていない分、売却益への依存度が高い」ことを意味する。
出口は売却一本勝負——水戸市の中古マンション市場が鍵
キャピタル型ファンドである以上、出口での売却価格がすべてを決める。水戸市元吉田町は水戸駅から南東約2km、幹線道路沿いの住宅エリア。新築共同住宅の需要は一定程度見込めるが、人口減少が進む地方都市で築浅物件がどの程度の価格で売却できるかは不確実性が高い。書面には「2年を超えない範囲で終了予定日を遅らせることができる」との延長条項があり、売却が難航した場合の時間的バッファは確保されているが、延長期間中の管理コストは利益を蝕む。
物件概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県水戸市元吉田町(MC#17: 字塩海道879番9 / MC#18: 別紙2-1参照) |
| 物件種別 | 共同住宅(MC#17: 既存 / MC#18: 新築開発) |
| 構造 | MC#17: 鉄骨造陸屋根4階建 / MC#18: 未完成(新築) |
| 築年月 | MC#17: 平成14年4月(築22年) / MC#18: 新築予定 |
| 延床面積 | MC#17: 582.44㎡ / MC#18: 未開示(新築) |
| テナント | MC#17: 法人及び個人 / MC#18: 未完成のため該当なし |
| 稼働率 | MC#17: 非開示 / MC#18: 未完成のため該当なし |
| 総戸数 | MC#17: 9戸 / MC#18: 未開示 |
※本分析はMC#18を主たる対象とする。MC#17のデータはbasic_dataに混在しているが、契約書面の内容からMC#18の条件を優先して分析。
収益構造とNOI分析
本ファンドはキャピタル型であり、配当原資の主軸は対象不動産の売却益である。ただし運用期間中の賃貸収益からもインカム配当が行われる構造(ハイブリッド的運用)。
書面記載の情報から推計可能な範囲で収益構造を整理する。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 満室想定賃料収入(年間) | 5,700,000円(書面記載) |
| 管理費(賃料の5%想定) | ▲285,000円(推計) |
| 火災保険料 | 不明 |
| 固都税 | 不明 |
| 賃貸仲介手数料(初年度) | 不明(月額賃料の100%) |
| 空室管理等特別費用 | 不明(月額賃料の90%×対象空室) |
| 推計NOI | 算出不能 |
書面にはNOIの開示がなく、管理費・保険料・固都税の具体的金額も記載されていない。満室想定賃料570万円/年から管理費5%(28.5万円)を差し引いた粗利は約541.5万円だが、固都税・保険料・修繕積立金を考慮すると実質NOIは400万〜480万円程度と推計される(あくまで概算)。
- 推計キャップレート: NOI 440万円(中央推計)÷ 物件価格6,910万円 ≒ 6.4%(推計)
- 配当原資: キャピタル型(売却益が主、賃貸収益は補完的)
なお、優先出資者への年間配当所要額は 5,500万円 × 4.5% = 247.5万円。満室想定賃料570万円/年から費用を差し引いたNOIでこれを賄えるかは、稼働率と費用構造次第。建物完成後の空室期間が長引けば、初回分配が3.0%まで低下する可能性が書面に明記されている。
市場価格検証
公開取引データによる検証は実施できませんでした(国土交通省不動産情報ライブラリからの近隣取引事例データが取得不可)。
以下、一般的な市場データに基づく推計分析を行う。
| 比較項目 | ファンド物件 | 水戸市一般水準(推計) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 土地㎡単価 | 推計後述 | 5〜8万円/㎡程度 | 元吉田町周辺の住宅地 |
| 新築RC/S造㎡単価 | 推計後述 | 25〜35万円/㎡程度 | 共同住宅・地方都市 |
物件価格6,910万円の内訳は「土地=取引事例比較法、建物=建築価格の合計」とされる。MC#17の同エリア物件(土地373.39㎡)の出資総額が6,000万円であることを参考にすると、土地価格は2,000万〜3,000万円程度、建築費は4,000万〜5,000万円程度と推計される。
水戸市元吉田町の住宅地は、公示地価ベースで概ね5〜7万円/㎡程度の水準感。仮に土地面積を300㎡前後と仮定すれば、土地価格1,500万〜2,100万円程度が相場観となる。建築費については、2024年時点の鉄骨造共同住宅の建築単価は地方都市でも坪80万〜100万円(㎡24万〜30万円)程度まで上昇しており、延床面積次第では4,000万〜5,000万円は不自然ではない。ただし鑑定評価がないため、これらはすべて推計の域を出ない。
土地評価と出口シナリオ
土地評価(推計):
水戸市元吉田町周辺の公示地価は、近隣の水戸市元吉田町(住宅地)で概ね50,000〜70,000円/㎡程度と推計される。路線価はこの8割程度(40,000〜56,000円/㎡)。土地面積が仮に300㎡前後であれば、路線価ベースの土地評価額は1,200万〜1,680万円程度、公示地価ベースでは1,500万〜2,100万円程度と概算される。
出口シナリオ:
本ファンドはキャピタル型のため、売却価格が投資家リターンを決定する。新築完成後の想定売却価格を、推計キャップレートの変動で試算する。
| シナリオ | キャップレート | 想定売却価格(推計) | 投資家への影響 |
|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.5% | 約8,000万円 | 元本全額償還+キャピタル配当(年利4.5%以上) |
| 基本 | 6.5% | 約6,770万円 | 元本全額償還(劣後バッファ内で吸収) |
| 悲観 | 7.5% | 約5,870万円 | 物件価格▲1,040万円、劣後1,410万円で吸収可能 |
※推計NOI 440万円を基準に算出。あくまで概算値。
楽観シナリオでは新築プレミアムが効き、売却益から十分な配当が可能。基本シナリオでは売却価格が取得価格をやや下回るが、劣後バッファ内。悲観シナリオでも劣後出資1,410万円の範囲内に収まる計算だが、建築コスト上振れが重なれば余裕は薄い。
ストレステスト
| 変動要因 | 変動幅 | 物件価値への影響 | 劣後バッファとの関係 |
|---|---|---|---|
| キャップレート+1% | 6.5%→7.5% | ▲約900万円(約13%下落) | バッファ1,410万円内(余裕510万円) |
| 空室率+20% | 0%→20% | NOI▲約88万円→売却価格▲約1,350万円 | バッファ1,410万円とほぼ同額(余裕60万円) |
| 建築費+10% | 約4,500万→約4,950万円 | 利益▲450万円 | 配当原資の圧縮(元本への直接影響は限定的) |
| 賃料下落10% | 570万→513万円 | NOI▲約57万円→売却価格▲約877万円 | バッファ内(余裕533万円) |
物件価格が6,910万円から約1,410万円(約20.4%)下落するまで、優先出資者の元本は無傷。金額にして1,410万円が防波堤である。キャップレート悪化と空室率上昇が同時に発生する複合シナリオでは、この防波堤を超える可能性がある。開発型ファンドの場合、建築コスト上振れは売却益を直接削るため、見かけの劣後比率20.4%ほどの安心感はない。「完成して、埋まって、売れる」という三段階すべてが計画通りに進むことが前提の構造である。
契約上の注意点
- 倒産隔離なし: 第1号事業(匿名組合型)のため、香陵住販が破綻した場合、ファンド資産は保全されない可能性がある。書面にも「信託法第34条に基づく分別管理とは異なり」と明記。
- 関連当事者取引の集中: 物件取得元=事業者自身、賃貸仲介=事業者、建物管理=事業者。利益相反を牽制する第三者の目が構造的に不在。
- 運用期間の延長条項: 売却未完了の場合、事業者判断で最大2年間の延長が可能。投資家の資金が最長3年半拘束されるリスクがある。
- 早期償還の可能性: 売却が早期に完了した場合、運用実日数に応じた日割り計算で分配。18ヶ月の満額配当が保証されているわけではない。
- 初回分配の利回り低下リスク: 建物未完成期間中は賃料収入ゼロのため、初回分配は年利3.0%まで低下する可能性が書面に明記されている。2回目分配で不足分を加算する設計だが、売却益が不十分であれば補填されない。
- 他ファンドへの組替え条項: 書面に「本事業者の固有財産とし、又は他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為」との記載あり。売却先が第三者ではなく事業者自身または別ファンドとなる可能性がある。
結論
開発型ファンドとしてのリスクプロファイルは標準的だが、鑑定評価なし・NOI非開示という情報開示の薄さが判断を曇らせる。香陵住販の上場企業としての信用力と償還実績20件が唯一の拠り所であり、「事業者を信じるかどうか」に帰着するファンドである。
⚠️ 免責事項:本記事はRE:Insight AIが公開情報・PDF書面を元に自動生成したファンド紹介・分析情報です。 投資助言には該当しません。投資判断は必ずご自身の責任のもとで行い、各事業者の公式情報を直接ご確認ください。