本記事について:本記事は、不動産小口化商品「みんなで大家さん」を巡る一連の事実経過を、行政の公表資料・裁判所の判断・会社側公表・決算公告を軸に時系列で整理する更新型アーカイブです。行政が認定した事実、会社側の公表・主張、報道機関の調査報道を明示的に区別して記載します。新たな公式発表があり次第、本ページを更新します。RE:Insightは本商品および運営会社と提携関係になく、本記事に広告は含まれません。
1. 商品と事業スキームの概要
「みんなで大家さん」は、不動産特定共同事業法(不特法)に基づく不動産小口化商品です。ファンドの組成・運用を担う営業者(不特法第1号事業者)は都市綜研インベストファンド株式会社(大阪市北区、大阪府知事許可)、出資募集の代理・媒介(同第2号事業者)はみんなで大家さん販売株式会社(東京都千代田区、東京都知事許可)が担い、両社は不動産会社・共生バンク(東京都千代田区)のグループ会社です。
商品は1口100万円、想定利回り年7.0%を掲げ、主力の「シリーズ成田」は成田空港北西の約45万㎡の開発プロジェクト「GATEWAY NARITA」用地を対象不動産としていました。報道によれば、シリーズ成田は2020年11月の第1号から2024年2月の第18号までに累計約1973億円を募集し、グループ全体では3万7000人以上から2000億円超の出資を集めたとされています。
2. 2024年6月17日:東京都・大阪府による行政処分
2024年6月17日、東京都はみんなで大家さん販売に対し、大阪府は都市綜研インベストファンドに対し、それぞれ不特法に基づく業務の一部停止命令(30日間)および指示処分を同日付で行いました。停止期間は都市綜研が6月18日から、販売会社が6月21日から各30日間です。
公表された処分理由の骨子は次のとおりです。
- 「成田空港周辺開発プロジェクト」の事業プラン変更が、対象不動産の資産性に大きく影響を及ぼす重要な事項であると認識しながら、事業参加者への説明を怠った
- 一部のファンドにおいて、開発許可の対象でない土地が対象不動産に含まれているにもかかわらず、開発許可を受けているとの誤った記載をして勧誘・契約を行った
- 是正のため対象外の土地を許可済みの土地と交換しようとした際、事業参加者との契約変更において不適切な行為があった
法律実務家の解説では、これらは契約成立前書面等の記載が事実に反すること・記載が不十分であること等を理由とするもの(不特法第24条第1項が定める契約成立前書面の交付・説明義務に関連)と、事業参加者や投資を検討する者に対する説明が不十分であることを理由とするもの(同第28条第1項・第2項が定める財産管理報告書の交付・説明義務に関連)に整理されています。
3. 執行停止を巡る司法判断
処分翌日の2024年6月18日、両社は処分の取消訴訟を提起するとともに執行停止を申し立て、東京地裁・大阪地裁はいずれも執行停止の申立てを一部認容する決定をしました。しかし大阪では、大阪府の即時抗告を受けた大阪高裁が地裁決定を取り消しています。この経緯は都市綜研自身が公表しており、同社は「大阪府の命令にしたがって、新規の募集及び販売に関する業務を停止しております」と説明しました(2024年6月25日付)。同社グループは同年7月5日付でお詫び文を公表しています。
4. 解約請求の集積(2024年6月〜2025年)
日経不動産マーケット情報によれば、処分公表後の24時間で470人超・総額28億円超の解約申し入れがあり、会社側は譲渡契約の締結を一時的に停止しました。その後の経過について日経ビジネスは、行政処分を巡る訴訟の記録として、2025年4月までに約8200人から総額452億円相当の解約請求があったこと、2024年7月初旬以降の申し込みについては事実上返金に応じていないことを報じています。
5. 分配金の停止(2025年7月〜)
2025年7月30日、シリーズ成田で分配金の支払い停止が発生し、同年9月30日には成田以外の商品にも停止が拡大したと報じられています。以後、主力商品を含むほとんどの商品で分配金の支払いが止まった状態が続いているとされます。東京新聞によれば、共生バンク側は2025年10月31日、出資者へのメールでグループの経営環境が急速かつ急激に悪化していると説明したとされています。
6. 解約に関する新提案と行政指導・提案撤回(2025年9月〜10月)
都市綜研は2025年9月30日付で、事業参加者に対し「解約に関する新たな提案」を行いました(大阪府が行政指導の発表の中でその存在に言及しています)。日経不動産マーケット情報の報道によれば、提案の内容は、出資持分をグループ子会社に譲渡し、元利金全額を保証するとされる「保険付き債券」を担保として交付、譲渡代金は半年以内を目標とする債券上場で得た利益から支払う、というスキームだったとされています。
この提案に対し大阪府は2025年10月10日、「事業参加者に具体的にかつ分かりやすく説明するよう」行政指導を実施し、10月14日に発表しました。報道によれば、大阪府は8項目にわたる質問状を提示したとされます。同日、東京都もみんなで大家さん販売への行政指導実施を発表しました。その後、日経ビジネスは、この提案が両都府の行政指導を受けて撤回されたと報じています。
7. 土地評価を巡る調査報道と会社側の主張
対象不動産の土地評価については、複数の報道機関による調査報道があります。以下はいずれも報道機関による独自の調査・試算に基づく報道であり、行政処分において認定された事実ではありません。
日経不動産マーケット情報は2024年10月、裁判資料に掲載された鑑定評価書を検証し、土地の評価額が最大で相場の100倍を超えると報じました。さらに同誌は2025年11月、入手した"原価表"の分析として、ファンドにおける土地評価額が仕入れ値の最大125倍に達し、いわゆる三為契約のスキームによって転売益が不特法の規制対象外であるグループ企業へ移転していたと報じました。同報道はまた、大阪府が2021年2月以降、グループ内の現物売買を経由する取引について繰り返し質問し、2023年3月には代表者を府庁に呼び出して土地評価の水増し懸念を指摘していたとしています。
東京新聞は2026年1月、東京都と共生バンク側の訴訟記録に添付された原価資料を基にした同紙の試算として、元々の用地取得総額が34億円前後と推定されるのに対し、ファンド社は約72倍の約2473億円と評価し、土地代に出資金約1500億円を充てて取得していたと報じました。
これに対し会社側は、訴訟において「(成田市の)開発許可の取得などで土地の価格は高騰している」と主張していると同紙は伝えています。土地評価の適否は係争中の論点であり、確定した事実ではない点に留意が必要です。
8. 成田用地の賃貸借契約終了と成田市の通知
2025年11月27日、計画地の約4割にあたる約19万㎡を所有する成田国際空港会社(NAA)の社長は定例記者会見で、共生バンクとの土地賃貸借契約を同月末で打ち切ると表明しました。「造成工事における残工事の遂行能力が確認できず、総合的に判断した」との説明です。この契約は2020年9月に造成工事を目的として年間1800万円で締結され、2度の延長を経ていました。一方、開発許可を所管する成田市は同月25日付で造成工事の4度目の期限延長申請(期限2027年8月31日)を受理しています。
その後、読売新聞によれば、成田市は2026年5月1日付で共生バンクに対し、造成工事の完了が見込めない場合は事業計画の変更または廃止を検討するよう求める通知を出したことが、同年6月11日の市議会における市長答弁で明らかになりました。開発用地の約4割で賃貸借契約が切れた状態にあると報じられています。
9. 税金滞納による土地の差押え(2025年12月)
テレビ朝日系(ANN)の2025年12月27日の報道によれば、会社側が同月25日に事業参加者へ送付したメールで、「みんなで大家さん 宗右衛門町」商品の対象土地について大阪国税局から差押書を受けたことが通知されました。債務額は1億7200万円超で、理由は2024年度の法人税および地方消費税の滞納とされています。同報道によれば、その後も同じ土地に対し債務額8400万円の差押えが行われました。
10. 集団訴訟と大阪地裁判決(2025年9月〜2026年6月)
2025年9月17日、出資者5人が出資金計約6000万円の返還を求めて大阪地裁に提訴し、同月19日には被害対策弁護団が発足しました。同年11月上旬には、全国の出資者1191人が契約解除と出資金計約114億円の返還を求めて集団提訴(訴状送付)に至ります。2026年2月18日には1346人が出資金計約117億円の返還を求めて追加提訴し、原告は全国47都道府県の計約2500人、請求総額は約230億円に達したと報じられています。
判決は2026年に入って相次いで言い渡されました。
- 2026年3月26日:原告3人に対し約1700万円の全額返還を命じる初判決
- 2026年6月5日:出資者84人に対し計約4億5500万円の返還命令
- 2026年6月10日:出資者60人に対し計約3億5200万円の返還命令
日本経済新聞の報道によれば、訴訟において会社側は出資金の返還義務を認める一方、「資金繰りの事情もあり、一括での返還を履行することが困難」と説明し、分割弁済等の内容による和解を求めましたが、原告側はこれを拒否しました。なお、上記はいずれも第一審判決であり、控訴等の有無を含む確定状況は本記事更新時点で確認できていません。上訴審の推移により結論が変わる可能性があります。
11. 約2881億円の債務超過(2026年8月・決算公告)
都市綜研インベストファンドは2026年8月5日付で第28期(2026年3月期)決算公告を公表しました。報道された内容によれば、収益性の低下を理由に保有土地の評価額を2681億円減損して257億円に、建物を104億円減らして137億円に切り下げた結果、売上約225億円に対し経常損失約195億円、当期純損失約2983億円を計上し、2026年3月末時点で約2881億円の債務超過となりました。前期(2025年3月期)の純資産は約102億円でした。
不特法に基づく事業許可の基準には財産的基礎(純資産等)に関する要件が定められており、朝日新聞等の報道によれば、大阪府は債務超過の状態がこの要件との関係で同法に抵触するとして調査を進めています。本記事更新時点で、この調査に基づく新たな行政処分等は公表されていません。会社側は保有資産の売却により債務超過を解消する見込みだと説明しているとされます。なお、決算公告は債務超過を公表したものであり、破産手続等の法的整理の開始が発表されたものではありません。
12. 本記事の位置づけと更新方針
本記事の記載は、(a) 行政の公表資料および裁判所の判断(認定事実)、(b) 会社側の公表・訴訟上の主張、(c) 報道機関による調査報道(媒体名を明記)の3層で構成しており、RE:Insight編集部の解釈は含めていません。土地評価の適否など係争中の論点は、いずれの当事者の主張も確定事実として扱っていません。
今後、大阪府による調査の帰結(追加処分等)、判決の確定・控訴審の判断、法的整理手続の申立て、次回決算公告などの公式発表があった場合に本ページを更新します。
更新履歴
- 2026-08-10:初版公開
主要出典
- 東京都報道発表「不動産特定共同事業者に対する行政処分について」(2024年6月17日)
- 大阪府報道提供資料(2024年6月17日)※府サイト上の掲載場所は変更されている場合があります
- みんなで大家さん公式サイト お知らせ(2024年6月25日付・7月5日付)/都市綜研インベストファンド トピックス
- 牛島総合法律事務所 Client Alert(2024年7月3日)
- 日本経済新聞(2024年6月18日、2025年11月6日・27日、2026年3月26日)
- 日経不動産マーケット情報/日経ビジネス(2024年6月21日、2024年10月、2025年10月14日、2025年11月17日)
- 東京新聞(2025年11月6日、2026年1月15日、2026年2月)
- テレビ朝日系ANN(2025年12月27日)
- 朝日新聞(2025年10月15日、2026年8月)
- 読売新聞オンライン(2026年6月)
⚠️ 免責事項:本記事はRE:Insight編集部が行政の公表資料・適時開示等の一次資料に基づき作成した調査記事です。 投資助言には該当しません。投資判断は必ずご自身の責任のもとで行い、各種一次資料を直接ご確認ください。