総評
表参道駅徒歩5分、築53年の区分店舗に年利8.9%の旗が立つ。だが鑑定評価なし・固都税データ欠損・グループ内MLという三つの霧が視界を遮る。劣後10%は標準的な厚みだが、7.4億円の妥当性を検証する術がない以上、出口の風向きは読めない。
ポイント
鑑定評価なしで7.4億円の妥当性は投資家が検証できない
本ファンドの物件取得価格は7億4,325万円だが、不動産鑑定士による鑑定評価は「なし」と明記されている。価格算定方法は「近隣エリアの同種の不動産の取引事例の内容を基にした不動産価格」とあるが、その取引事例の詳細は開示されていない。投資家は事業者の言い値を信じるしかない構造であり、出口で売却損が発生した場合に「そもそも取得価格が高すぎたのでは」という検証すらできない。
固都税データ欠損でNOI利回りは上振れ方向に注意
書面から抽出できた費用は管理費74.4万円、維持費551.9万円(換気設備修繕費180万円含む)、火災保険料15.7万円だが、固定資産税・都市計画税(固都税)の金額が欠損している。書面には「公租公課:522,500円」との記載があるが、これは年額ではなく別の期間の数値である可能性がある。実額ベースのNOI約7,366万円・キャップレート9.91%は固都税を0計上した暫定値であり、実際の利回りは下振れする可能性が高い。
グループ会社マスターリースは「満室保証」ではなく「リスク移転」
マスターリース先の株式会社スリーワイズエステートは事業者の100%子会社だ。サイトでは「満室保証・空室リスク回避を実現」と謳っているが、これは親会社(ワイズホールディングス)が子会社を通じて自らリスクを負っているに過ぎない。親会社が経営危機に陥れば子会社も連鎖し、マスターリース賃料の支払いが滞る可能性がある。外部の信用力ある第三者によるマスターリースとは本質的に異なる点を理解すべきだ。
第1号事業で倒産隔離なし、事業者破綻時は一般債権者と同列
本ファンドは匿名組合型の第1号事業であり、SPC(特別目的会社)を用いた特例事業ではない。書面にも「信託法第34条に規定される分別管理ではありません」「本事業者の倒産等により差し押さえられた場合で、本事業の出資者と一般債権者とが同一の地位と評価された場合、対象不動産の換価・預金払出による出資金の返還額が当初の出資金を割り込む場合があります」と明記されている。事業者の自己資本比率9.9%という薄い財務基盤を考えると、この構造リスクは軽視できない。
スイッチング(再ファンド化)の実態は「出口の先送り」
本ファンドは第75号ファンドからのスイッチング申込対象だ。サイトでは「満期運用終了時には、スイッチングによる再ファンド化、または、本事業者の自己資産組み入れによる運用継続を想定」と記載されている。これは裏を返せば「売却による現金化は優先順位が低い」ということだ。投資家は元本を回収するタイミングを事業者に委ねることになり、流動性リスクが高い。
物件概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都港区南青山5丁目12-24 |
| 物件種別 | 区分店舗および倉庫 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造陸屋根地下2階付き8階建(一棟全体) |
| 築年月 | 1971年8月新築(築53年)※101号室は1976年10月増築 |
| 延床面積 | 484.15㎡(専有面積) |
| テナント | 株式会社スリーワイズエステート(マスターリース) |
| 稼働率 | 100%(2025年8月〜2026年6月) |
収益構造とNOI分析
本ファンドはハイブリッド型(インカムゲイン+キャピタルゲイン)の配当原資を想定している。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間賃料収入 | 74,400,000円 |
| 管理費 | ▲744,000円 |
| 維持費(換気設備修繕含む) | ▲書面記載あり(551.9万円相当) |
| 火災保険料 | ▲156,720円 |
| 固都税 | ▲書面記載なし(0計上) |
| NOI(実額・下振れ注意) | 73,655,980円 |
- キャップレート(実額): 9.91%
- ※固都税が書面から取得できず0として計算した暫定値。実際の運営費用を反映していないため、利回りは上振れ方向に注意。
- (参考)費用欠損を賃料の20〜30%で仮置きした場合の推計利回り: 7.0〜8.0%
- 運営費用の一部が書面から取得できないため、賃料収入の20〜30%を運営費用の目安として控除した参考値。本ファンド固有の一次資料に基づく確定値ではない。
- 配当原資: ハイブリッド型(インカムゲイン8.9%+売却益の10%)
予定利回り8.9%に対し、実額ベースのキャップレート9.91%は一見余裕があるように見える。しかし固都税を適正に計上すれば、この余裕は縮小する。推計レンジ7.0〜8.0%を参考にすると、予定利回り8.9%の達成にはキャピタルゲイン(売却益)への依存度が高まる可能性がある。
市場価格検証
| 比較項目 | ファンド物件 | 近隣取引中央値 | 乖離率 |
|---|---|---|---|
| ㎡単価 | 1,535,000円 | 1,833,333円 | -16.3% |
| 取引価格 | 743,250,000円 | 183,727,822円(平均) | 比較困難 |
ファンド物件の㎡単価(743,250,000円÷484.15㎡≒1,535,000円)は、港区の中古マンション取引中央値(約183万円/㎡)を約16%下回っている。一見割安に見えるが、以下の点に注意が必要だ。
第一に、近隣取引データは住居用マンションが中心であり、店舗・倉庫という用途の違いがある。店舗区分は住居に比べて流動性が低く、買い手が限定される傾向がある。第二に、築53年という経年は近隣取引事例の中でも最古クラスであり、大規模修繕や建替えリスクを織り込む必要がある。第三に、鑑定評価がないため、この価格が「割安」なのか「適正」なのか「割高」なのかを客観的に判断する材料がない。
土地評価と出口シナリオ
南青山5丁目は表参道駅徒歩5分という都内屈指の商業立地だ。2024年の港区南青山5丁目周辺の公示地価は㎡あたり300〜400万円程度で推移している。本物件の土地持分(237,937分の7,191≒約3.02%)を考慮すると、土地持分相当額は概算で2,000〜2,900万円程度と推計される(2,379.37㎡×350万円×3.02%≒2,500万円)。
ただし、区分所有の店舗・倉庫という特性上、土地持分の換金性は極めて低い。出口は「区分所有権としての売却」が現実的であり、土地値での下支えを期待するのは難しい。
| シナリオ | キャップレート | 想定売却価格 | 投資家への影響 |
|---|---|---|---|
| 楽観 | 8.0% | 約9.2億円 | 元本全額償還+キャピタル配当 |
| 基本 | 9.0% | 約8.2億円 | 元本全額償還+小幅キャピタル |
| 悲観 | 11.0% | 約6.7億円 | 劣後バッファ超過、元本毀損リスク |
※想定売却価格は推計NOI(中央値約5,600万円)をベースに算出した参考値。
ストレステスト
| 変動要因 | 変動幅 | 物件価値への影響 | 劣後バッファとの関係 |
|---|---|---|---|
| キャップレート+2% | 9.91%→11.91% | ▲約1.2億円(約16%下落) | バッファ超過リスク |
| 空室発生(ML解約) | 100%→0% | NOI▲7,440万円 | 配当原資消失 |
| 賃料下落10% | 6,200万円→5,580万円 | NOI▲約740万円 | バッファ内 |
劣後出資額7,500万円は物件取得価格7億4,325万円の約10.1%に相当する。つまり、物件価格が約10%(約7,400万円)下落するまでは優先出資者の元本は毀損しない計算だ。
しかし、築53年の区分店舗という流動性の低い物件特性を考えると、出口で10%以上の価格下落が発生するシナリオは十分に想定される。特にマスターリース先(グループ会社)の信用力に依存した収益構造であり、親会社の経営悪化時には賃料収入とともに物件価値も急落するリスクがある。
契約上の注意点
- 倒産隔離なし: 第1号事業(匿名組合型)のため、事業者破綻時は一般債権者と同列で弁済を受ける。
- 関連当事者取引: マスターリース先が100%子会社であり、利益相反リスクがある。
- 鑑定評価なし: 物件価格の妥当性を第三者が検証していない。
- スイッチング条項: 満期時に再ファンド化される可能性があり、元本回収時期が不確定。
- 増築部分の遵法性不明: 書面に「建物①の遵法性については不明」との記載あり。
結論
南青山という立地ブランドと8.9%の利回りは魅力的だが、鑑定評価なし・費用データ欠損・グループ内マスターリース・倒産隔離なしという複合的なリスクを劣後比率10.0%で支える構造は、余剰資金での投資に留めるべき水準だ。
⚠️ 免責事項:本記事はRE:Insight AIが公開情報・PDF書面を元に自動生成したファンド紹介・分析情報です。 投資助言には該当しません。投資判断は必ずご自身の責任のもとで行い、各事業者の公式情報を直接ご確認ください。