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利回り不動産92号ファンド(赤坂一棟テナントビル第2回)

利回り不動産 ・ 分析日: 2026年09月30日 ・ RE:Insight AI
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利回り9.2%の甘い蜜には棘がある。築42年の借地権ビルに約7億円、しかし鑑定評価なしで価格の妥当性は闇の中。劣後比率10%は物件価格1割下落で消える薄氷のバッファ。赤坂駅徒歩4分の立地は光るが、出口で買い手がつくかは別の話。

インカム型マスターリース有高利回り運用12ヶ月
予定利回り
9.2%
運用期間
12ヶ月
募集総額
7.0億円
劣後比率
10.0%
所在地
東京都港区赤坂三丁目19番8号
種別
一棟ビル(建物のみ)
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4.0
収益性
2.6
透明性
3.3
元本安全性
3.0
事業者信頼性

ポイント

鑑定評価なしで約7億円の妥当性は検証不能

本ファンドの物件取得価格は696,481,801円。書面には「利害関係人ではない不動産鑑定士による価格調査」とあるが、正式な鑑定評価は「なし」と明記されている。価格調査と鑑定評価は法的拘束力も信頼性も異なる。投資家が第三者の目で価格の妥当性を検証する術がない状態で、約7億円を信じろというのは少々乱暴だ。

マスターリース先はグループ会社という構造的矛盾

マスターリース契約の相手方は「株式会社スリーワイズエステート」。社名に「スリーワイズ」を冠しており、事業者「ワイズホールディングス」のグループ会社と推認される。空室リスクを吸収するはずのマスターリースが、実質的に身内取引では、テナント退去時の賃料減額リスクが事業者グループ内で循環するだけ。外部の信用力で担保されているわけではない点を認識すべきだ。

借地権付き物件の出口リスクは軽視できない

対象不動産は土地が借地権、建物のみ所有権という構造。地代は年間約1,595万円と重く、NOI(推計)の約2割を食う。借地権付き物件は売却時に買い手が限定され、流動性が低い。事業者は「外部売却を本格的に進める」と述べているが、築42年の借地権付きビルに7億円近い値札をつけて買い手がつくかは未知数。売却できなければ「スイッチングによる再ファンド化」という名の延命措置が待っている。

前回ファンドからの利回り上昇は修繕完了と報酬減額が理由

第78号ファンド(利回り8.5%)から本ファンド(9.2%)への利回り上昇について、事業者は「大規模修繕完了」「事業者報酬の減額」「賃料増額」を理由に挙げている。修繕費用を前回ファンドで負担させ、今回は身軽になったという構図だ。これ自体は合理的だが、裏を返せば前回投資家は修繕コストを負担し、今回投資家がその果実を享受する形。スイッチング投資家にとっては継続メリットがあるが、新規投資家は「修繕済み物件を高値で買う」リスクも意識すべきだ。

消防設備・昇降機に是正指摘あり

書面には消防設備等点検報告書で「受信機用予備電源の電圧不足」「感知器の未設置・未警戒箇所」「誘導灯の器具不良」等の是正指摘が記載されている。昇降機定期検査でも「駆動装置等の耐震対策」「戸開走行保護装置」等の既存不適格が指摘されている。是正費用は事業者負担と明記されているが、築42年の設備劣化リスクは今後も継続する。

物件概要

項目 内容
所在地 東京都港区赤坂三丁目19番8号
物件種別 一棟ビル(建物のみ・借地権付き)
構造 鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階付6階建
築年月 1983年2月(築42年)
延床面積 686.55㎡(専有部分550.81㎡)
テナント 株式会社スリーワイズエステート(マスターリース)
稼働率 100%(2024年11月〜2026年9月)

収益構造とNOI分析

本ファンドは書面に運営費用の詳細記載がなく、実額ベースのNOIは算出できない。以下は賃料収入から費用を推計した参考値である。

  • NOI(実額): 書面に運営費用の記載がなく算出できません。
  • (推計・参考値)想定NOI: 59,640,000〜68,160,000円/年
  • (推計・参考値)想定キャップレート: 8.6〜9.8%
  • 運営費用の一部が書面から取得できないため、賃料収入の20〜30%を運営費用の目安として控除し、利回りをレンジで推計した参考値です。本ファンド固有の一次資料に基づく確定値ではありません。
  • 配当原資: ハイブリッド型(インカムゲイン+キャピタルゲイン)

収益構造の内訳(書面記載の支出項目)

項目 金額(年額)
年間賃料収入(ML賃料) 85,200,000円
管理・建物維持費 ▲2,910,000円
火災保険料 ▲925,550円
公租公課 ▲528,376円
地代 ▲15,948,000円
価格調査費 ▲300,000円
差引(参考) 64,587,074円

書面には上記の支出項目が記載されているが、これらが運営費用の全てかは不明。推計キャップレート8.6〜9.8%は予定利回り9.2%と概ね整合するが、地代負担が重く、実際のNOIは上記差引額に近い可能性がある。

配当原資の構造

インカムゲインは年率9.2%で計算され、マスターリース賃料から支払われる。キャピタルゲインは売却益の10%が優先出資者に分配される設計。売却が実現しなければインカムのみの分配となり、売却できなければ再ファンド化(スイッチング)または事業者の自己資産組み入れが想定されている。

市場価格検証

近隣取引事例データは港区内の中古マンション等が中心であり、借地権付き一棟テナントビルの直接比較は困難。参考として港区全体の取引データを確認する。

比較項目 ファンド物件 港区取引中央値 備考
㎡単価 約101万円 約184万円 借地権・築古で大幅に低い
取得価格 約6.96億円 ― 一棟ビルのため単純比較不可

ファンド物件の㎡単価(696,481,801円÷686.55㎡≒約101万円)は、港区中古マンション等の中央値(約184万円/㎡)を大きく下回る。ただし、これは借地権付き・築42年・テナントビルという属性の違いによるもので、単純な割安判断はできない。

借地権付き物件は所有権物件に比べ2〜3割程度のディスカウントが一般的とされる。築42年のRC造ビルは建物価値がほぼ減価償却済みであり、実質的には借地権の価値+収益還元価値で評価される。鑑定評価がない以上、この価格が適正かどうかは投資家自身で判断するしかない。


土地評価と出口シナリオ

土地評価(推計)

赤坂三丁目の商業地域における路線価は、一般的に㎡あたり200〜300万円程度と推計される(公開情報に基づく概算)。敷地面積138.67㎡に対し、借地権割合を70%と仮定すると:

  • 土地持分相当額(推計): 138.67㎡ × 250万円 × 70% ≒ 約2.4億円

ただし、これは路線価ベースの概算であり、実勢価格とは乖離がある可能性がある。

出口シナリオ

シナリオ キャップレート 想定売却価格 投資家への影響
楽観 7.5% 約8.6億円 元本全額償還+キャピタル配当
基本 9.0% 約7.2億円 元本全額償還(薄利)
悲観 11.0% 約5.9億円 劣後バッファ超過・元本毀損リスク

※想定売却価格は推計NOI中央値(約6,400万円)をキャップレートで割り戻した概算。

基本シナリオでは元本償還は可能だが、悲観シナリオでは物件価格が約15%下落し、劣後バッファ(約10%)を超過する。借地権付き築古ビルの売却は買い手が限定されるため、悲観シナリオの蓋然性は無視できない。


ストレステスト

変動要因 変動幅 物件価値への影響 劣後バッファとの関係
キャップレート+1% 9%→10% ▲約6,400万円(約9%下落) バッファ内(ギリギリ)
キャップレート+2% 9%→11% ▲約1.1億円(約15%下落) バッファ超過
賃料下落10% 7,100万円→6,390万円 NOI▲約640万円 配当原資に影響
地代上昇10% 1,595万円→1,754万円 NOI▲約160万円 配当原資に影響

劣後出資額は約6,965万円(出資総額の10%)。これは物件取得価格約6.96億円の約10%に相当する。つまり、物件価格が約10%(約7,000万円)下落するまでは個人投資家の元本は無傷だが、それを超えると元本毀損が始まる。

借地権付き築古ビルという属性を考慮すると、キャップレート+2%程度の変動は十分にあり得る。その場合、劣後バッファは枯渇し、優先出資者にも損失が及ぶ。


契約上の注意点

  • 倒産隔離なし: 第1号事業(匿名組合型)のため、事業者が破産した場合、対象不動産は事業者の破産財団に組み込まれる可能性がある。信託法第34条の分別管理ではない点に注意。

  • 関連当事者取引: マスターリース先(スリーワイズエステート)が事業者グループ会社と推認される。空室リスクの外部転嫁ではなく、グループ内での循環構造。

  • スイッチング条項: 売却できなかった場合、「スイッチングによる再ファンド化」が想定されている。投資家の意思に関わらず次回ファンドへの移行を促される可能性がある。

  • 途中解約の制限: 「やむを得ない事由」がある場合のみ解約可能。流動性は極めて低い。

  • 消防設備・昇降機の是正指摘: 是正費用は事業者負担と明記されているが、築42年の設備劣化リスクは継続する。


結論

赤坂駅徒歩4分の立地と利回り9.2%は魅力的だが、鑑定評価なし・借地権付き・築42年・グループ会社へのマスターリースという構造的リスクを劣後比率10.0%で支えるには心許ない。余剰資金での分散投資先としては検討可能だが、集中投資は避けるべき案件。

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