総評
利回り6.0%、劣後比率10%、新築戸建3棟という看板は悪くない。だがその裏側には鑑定評価なし・NOI非開示・グループ内MLという三重のベールが垂れている。自己資本比率9.1%の事業者が掲げる「安定ファンド」の文字を額面どおり受け取るのは早計。出口の霧が晴れるまで、余剰資金での参戦が無難。
ポイント
鑑定評価なしで7,880万円の妥当性は検証不能
本ファンドの物件取得価格7,880万円は「近傍の類似物件の取引実例に基づいた評価額」とされるが、不動産鑑定士による鑑定評価は実施されていない。新築戸建3棟(延床面積合計238.76㎡)で1棟あたり約2,627万円という価格設定だが、第三者による客観的な価値検証がない以上、投資家は事業者の言い値を信じるしかない。事業者は「近隣取引事例」を根拠とするが、その具体的な比較対象や算定プロセスは開示されていない。
マスターリース先はグループ会社、利益相反の構造
賃料保証を行う株式会社BB保証は、書面上「外部の保証会社」と記載されているが、業務委託先として賃貸業務・家賃保証業務を一括受託している。事業者TSONとの資本関係は書面から明確に読み取れないものの、同一グループ内での取引である可能性が高い。マスターリース賃料が年間464.4万円(月額38.7万円)と具体的に開示されている点は評価できるが、この賃料水準が市場実勢と乖離していないかの検証材料が不足している。10年契約・3年毎の賃料改定という条件も、改定時の下落リスクを内包する。
「インカム5%+キャピタル1%」の配当原資に要注意
事業者は「インカムゲイン5.0%、キャピタルゲイン1.0%」と配当原資を明示している。年間賃料464.4万円に対し、優先出資7,090万円の5%は354.5万円。賃料収入でインカム配当は賄える計算だが、残り1%のキャピタルゲインは売却益が前提となる。書面には「売却活動を行いながら、賃料収入を得られる物件特性を踏まえ、保有継続も含めて運用判断を行う」とあり、売却が不調なら契約延長(最大6ヶ月)の可能性がある。「安定ファンド」という表現は、出口の不確実性を覆い隠している。
自己資本比率9.1%の事業者財務は薄氷の上
TSONの2025年度決算では自己資本比率9.1%、純資産5.6億円に対し総資産61.8億円という高レバレッジ経営。2023年度の赤字から黒字転換を果たし、当期純利益9,194万円を計上したのは好材料だが、不動産クラファン事業者としても低水準の自己資本比率は、市況悪化時の耐久力に疑問符がつく。281件・累計344億円の運用実績と元本割れゼロの実績は評価できるが、匿名組合契約では事業者破綻時に投資家資産は保全されない点を忘れてはならない。
清須市の地価上昇トレンドは追い風だが過信は禁物
事業者は「公示地価が2026年で4.08%上昇、直近6年間で18.22%上昇」と強調する。確かに名古屋市隣接のベッドタウンとして需要は底堅いが、本物件の所在地「春日長畑」は清須市の中でも駅から自転車10分という立地。近隣取引データでは土地の㎡単価中央値が14.5万円程度であり、本ファンドの土地面積合計289.11㎡に当てはめると土地評価は約4,200万円。建物3棟で約3,700万円という配分になるが、新築木造戸建の建築コストとして妥当かどうかは、鑑定評価なしでは検証できない。
物件概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県清須市春日長畑84番1の一部 |
| 物件種別 | 戸建賃貸住宅(3棟) |
| 構造 | 木造2階建て(2×4構造) |
| 築年月 | 2026年5月(築2ヶ月) |
| 延床面積 | 238.76㎡(A棟79.09㎡、B棟79.71㎡、C棟79.96㎡) |
| 土地面積 | 289.11㎡(A棟114.22㎡、B棟87.09㎡、C棟87.80㎡) |
| テナント | 株式会社BB保証(マスターリース) |
| 稼働率 | 100%(マスターリース契約による保証) |
収益構造とNOI分析
書面ではNOI(純営業収益)の詳細な費用内訳が開示されていない。マスターリース賃料のみが明示されており、管理費・保険料・固都税等の費用項目は「本事業の費用として本事業に係る資産から支出」とされるのみで具体額は不明。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間賃料収入(ML保証) | 4,644,000円 |
| 管理費 | 非開示 |
| 火災保険料 | 非開示 |
| 固都税 | 非開示 |
| NOI(推計) | 4,644,000円以下 |
- 表面利回り: 4,644,000円 ÷ 78,800,000円 = 5.89%
- 配当原資: ハイブリッド型(インカム5.0%+キャピタル1.0%)
費用控除後の実質NOIは賃料収入を下回るため、インカム配当5.0%(約354.5万円)を賃料収入で賄うには、年間費用を約110万円以内に抑える必要がある。新築物件のため修繕費は低く抑えられるが、固都税・保険料・管理費を合算すると、この水準に収まるかは不透明。
市場価格検証
| 比較項目 | ファンド物件 | 近隣取引中央値 | 乖離率 |
|---|---|---|---|
| 土地㎡単価 | 約272,600円(推計) | 145,000円 | +88% |
| 総額 | 78,800,000円 | 27,410,973円 | +188% |
近隣取引データの土地㎡単価中央値14.5万円を本物件の土地面積289.11㎡に適用すると、土地評価は約4,192万円。残り約3,688万円が建物3棟分となり、1棟あたり約1,229万円。新築木造戸建(延床約80㎡)の建築コストとしては、坪単価約51万円相当で、ローコスト住宅としては妥当な範囲内。
ただし、近隣取引データには「宅地(土地と建物)」で新築木造・土地115㎡・建物105㎡が4,500万円という事例(2024年第1四半期、西枇杷島町城並)があり、本ファンドの1棟あたり約2,627万円は相対的に割安に見える。もっとも、鑑定評価がない以上、この価格設定が適正かどうかの客観的検証は不可能である。
土地評価と出口シナリオ
清須市春日エリアの公示地価は上昇トレンドにあり、事業者の主張する「直近6年間で18.22%上昇」は公開情報と整合する。ただし、本物件は駅から自転車10分という立地であり、駅近物件と同等の上昇率を期待するのは楽観的。
土地持分相当額の概算(推計):
- 土地面積289.11㎡ × 近隣中央値145,000円/㎡ = 約4,192万円
- 建物評価(残存): 78,800,000円 − 41,920,000円 = 約3,688万円
| シナリオ | キャップレート | 想定売却価格 | 投資家への影響 |
|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.0% | 92,880,000円 | 元本全額償還+キャピタル配当 |
| 基本 | 5.9% | 78,712,000円 | 元本全額償還(ギリギリ) |
| 悲観 | 7.0% | 66,343,000円 | 劣後出資で吸収、優先出資は毀損リスク |
ストレステスト
| 変動要因 | 変動幅 | 物件価値への影響 | 劣後バッファとの関係 |
|---|---|---|---|
| キャップレート+1% | 5.9%→6.9% | ▲約11,500,000円(14.6%下落) | バッファ超過 |
| 空室率+10% | 0%→10% | NOI▲464,400円 | 配当原資に影響 |
| 賃料下落10% | 387,000円→348,300円 | NOI▲464,400円 | 配当原資に影響 |
劣後出資額790万円は物件取得価格7,880万円の**10.0%**に相当する。物件価格が10.0%(約788万円)下落するまでは優先出資者の元本は保全されるが、キャップレートが1%上昇するだけで約14.6%の価値下落となり、劣後バッファを突破する。新築物件のため短期的な価値下落リスクは限定的だが、出口時の市況次第では元本毀損の可能性がある。
契約上の注意点
- 倒産隔離なし: 第1号事業(匿名組合型)のため、事業者破綻時に投資家資産は保全されない。信託法第34条の分別管理とは異なる旨が明記されている。
- マスターリース先との利害関係: 株式会社BB保証が賃貸業務・家賃保証業務を一括受託。グループ内取引の可能性が高く、賃料水準の客観性に疑問が残る。
- 契約延長条項: 売却未完了時は最大6ヶ月の契約延長が可能。投資家の同意なく延長される点に注意。
- アップフロントフィー: 組成時に調達額の2.2%(年利換算)が徴収される。実質的な初期コストとして認識すべき。
- 譲渡制限: 出資持分の譲渡には事業者の事前承諾が必要。流動性は極めて低い。
結論
劣後比率10.0%・実績281件の事業者という組み合わせは標準的だが、鑑定評価なし・NOI非開示・グループ内ML取引という三重の不透明さが、「安定ファンド」の看板に影を落とす。余剰資金での分散投資先としては検討可能だが、出口リスクを織り込んだ上での判断が必要。
⚠️ 免責事項:本記事はRE:Insight AIが公開情報・PDF書面を元に自動生成したファンド紹介・分析情報です。 投資助言には該当しません。投資判断は必ずご自身の責任のもとで行い、各事業者の公式情報を直接ご確認ください。